●1948.6.1 MGM
●日本公開1950(MGM提供 CMPE配給)
キャスト
(役名……俳優名)
- ドン・ヒューズ……フレッド・アステア
- ハナー・ブラウン……ジュディ・ガーランド
- ジョナサン……ピーター・ローフォード
- ナディーン・ヘイル……アン・ミラー
- フランソワ……ジュールス・マンシン
- マイク……クリントン・サンドバーグ
- エシー……ジェニー・ルゴン
- 花屋……マーガレット・バート
- ダンサー……ハル・ベル
- エキストラ……サム・ハリス
ストーリー
ドンとナディーンは人気のダンスコンビ。しかし、ナディーンは「独立したい」と、コンビの解消を宣言。それまで二人は、仕事上のパートナーだけでなく、恋人でもあったのだが、ナディーンはすべてを解消したいという。
ドンは、「自分が育ててやったのに」と怒り、「誰でも仕込める」と言って、そのへんの酒場の女に適当に声をかけ、新しいコンビを作ろうとする。
ドンに、適当に選ばれたハナーは、すべてドンの言うがままに踊り、ようやくステージには出られるようになるが、あまり拍手はもらえない。
やがてドンは、「ちっともハナーの魅力を生かしていない。ナディーンの代わりをさせているだけだった」と気づき、二人は、ドン&ハナー独自の踊りを創作し、スターになる。
ドンとハナーは、徐々に心も近づいていくが、ハナーはナディーンの存在をずっと気にしている。
ナディーンのレビューで、ナディーンが、強引にドンとラブソングを踊るのを見て、ハナーはドンに、「私を、ナディーンを見返す道具にしないで」と、叫んでしまう。
その夜は、ドンとハナーは喧嘩別れしてしまうが、次の日のイースター・パレードに、ハナーはドンを誘い出し、仲直り。ドンは、ハナーに指輪を贈る。
ミュージカル・ナンバー
(★はアステアのナンバー)
- Happy Easter★
- Drum Crazy★
- It Only Happens When I Dance with You★
- Everybody's Doin' It
- I Want to Go Back to Michigan
- Beautiful Face Need Beautiful Clothes★
- A Fella with an Umbrella
- I Love a Piano★
- Snooky Ookums★
- Ragutime Violin★
- When the Middight Choo-Choo Leaves for Alabam★
- Shakin' the Blues Away
- Steppin' Out with My Baby★
- A Couple of Swells★
- The Girl On the Magazine Cover
- Better Luck Next Time
- Easter Parade★
- At the Devil's Ball
- This Is the Life
- Along Came Ruth
- Call Me Up Some Rainy Afternoon
その他情報
- アステアは、「ブルー・スカイ」の後、引退していたが、本作に主演する予定だったジーン・ケリーが、骨折で降板することになったため、急きょ代役を引き受けた。(全編踊りまくりな主役であり、ましてジーンに代わる人であれば、アステアくらいしか名前は挙がらなかったろう)
- アステアは、引退後の2年間、自分の経営するダンス・スタジオで、ボールルーム・ダンスを教える以外は、本当に踊っていなかった。2年のブランクを取り戻すのに必要な時間は「3日」だったという
- 「Drum Crazy」は9回撮りなおした
- アーヴィング・バーリンの、本作のギャラは50万ドル。プラス、収益の1%
- ハナーとジョナサンが初対面の雨のシーンで、ジュディの帽子に付いている羽飾りが、雨に濡れて色が落ちるアクシデントがあった。垂れ落ちる染料で、ジュディの顔も、衣裳も汚れてしまったので、スタッフが羽飾りにワセリンを塗り、色止めをした。(私、女ですけど、ワセリンが染料の溶けるのを止められるとは知りませんでした。水をはじくから溶けなくなるってこと?)そのために、ジョニーに会ったばかりのハナーの羽飾りは「ホワホワ」なのに、ジョニーに傘をさし掛けられるハナーの羽飾りは、「ベシャッ」としている。(無理やりつじつま合わせるなら、傘に入れてもらうときに羽根がぬれちゃったという見方をすることもできるが……)
- ジュディの歌った「ミスター・モノトニー」という歌が、本作からばっさりカットされている。理由は「時間合わせ」と、「ハナーのかわいらしさから離れすぎている」ということらしい。「かわいらしさから離れすぎている」ということは、要するに「カッコよすぎてカット」ということである。なんとまあ、贅沢なことを。ちなみに、「ミスター・モノトニー」は、「ザッツ・エンタテインメントⅢ」で見ることができるし、CDでも聞くことができる。「モノトニー」のジュディは、タキシードにソフト帽にホットパンツのスタイルで登場。後に彼女の代表曲となる「ゲット・ハッピー」の衣裳は、「モノトニー」の衣装を踏襲したものである。「タキシード・ソフト帽・ホットパンツ」のスタイルは、エンターテイナー・ガーランドの魅力と迫力をスクリーンに刻みつけ、最終的にはジュディの代名詞となった
- 当初、本作の監督はヴィンセント・ミネリの予定だったが、ガーランドの精神分析医が、「ミネリの監督は、ジュディの精神状態にはマイナスになる」との見解を話したため、代わってチャールズ・ウォルターズが監督することとなった
- 「Steppin' Out with My Baby」は、アステアのソロに入ってから、スローモーションが使用されている。バックの群舞は通常のスピードで、その前で踊るアステアだけがスローモーションで踊る。これは、通常のカメラで撮ったバックの映像に、スローモーションカメラで撮ったアステアを二重焼きしたものである
- 「Steppin' Out with My Baby」では、MGMの優秀なダンサーたちが、書割程度の役目しか果たしていない。カメラも背景も踊らないのは、中央で踊っているのがアステアだからである!
- 「Drum Crazy」では、アステアの得意なドラム演奏が、ほんの少しだけ披露されている
- 本作は、興行的には成功を収め(1948年の興行収入第一位)、映画評も、アステア復帰を大歓迎するものが並んだ
- ハナーとドンの初舞台で、ハナーの羽の付いた衣裳の羽根の中に、アステアが顔を入れたまま踊るシーンがあるが(ハナーが踊りを間違えたためにそうなる)、これは、アステア&ロジャース時代の「羽根事件」のセルフパロらしい。(羽根事件については、「トップ・ハット」を参照ください)
- 「A Couple of Swells」は、玄人に評価が高いダンスである。ジュディとアステアがルンペンの扮装で踊るもの。(アステアはルンペンのときでもシルクハットを被っている!)MGM史上屈指の名ナンバーと言われるが、私はあまり好きではなかったりする……
- アン・ミラーはアステアとは、身長がつりあわない。アンが背が高いので、二人で踊るときには、彼女はハイヒールをはくことができなかった。本作でのアステア&ミラーのダンスは、いずれもゴージャスな衣裳なのに、ペタンコ靴をはかなくてはならなかったので、アンは非常に残念だったようである。残念というか、悔しかったようである
- アステア&ミラーのダンスでは、アンはペタンコ靴をはく必要があったので、一箇所だけ、映画の中でおかしなシーンが出現している。「The Girl On the Magazine Cover」を踊るアンは、ヒールのある靴を履いているのに、そこから髪飾りだけ外した状態でアステアのもとに行き、一緒に踊り始めるアンの靴が、なぜかペタンコ靴にすり替わっている
- 連続性のミスは、もう一箇所ある。「Drum Crazy」で、アステアがドラムスティックを投げ捨てるシーンがあるが、その少し後に、カメラが同じ場所を映すと、ドラムスティックが、なぜか画面手前に移動してきている(ドラムスティックが消えている方が、まだ自然だったのではないか?)
- ナディーン役は、当初はシド・チャリスが演じる予定だったが、シドが膝を怪我したために、アン・ミラーに交替した
- アステア初登場シーンの服の、胸についている青いコサージみたいなものが何なのか、いくら見ても分からない。(生花? 造花?)正体をご存知の方は教えてください
- アステアとウサギのぬいぐるみを奪い合う少年は、ジミー・ベイツ君といい、「雨に歌えば」にも出演している
スタッフ
- 製作……アーサー・フリード
- 監督……チャールズ・ウォルターズ
- 原案……フランシス・グッドリッチ、アルバート・ハケット
- 脚色……フランシス・グッドリッチ、アルバート・ハケット、シドニィ・シェルダン
- 撮影……ハリー・ストラドリング
- 美術……セドリック・ギボンズ、ジャック・マーチン・スミス
- 美術セット……エドウィン・B・ウィリス
- 音楽……ジョニー・グリーン、ロジャー・イーデンス
- 歌曲……アーヴィング・バーリン
- 振り付け……ロバート・アルトン
- 衣裳……アイリーン
- ヘア・スタイリスト……シドニー・ギラロフ
- カラーディレクター……ヘンリー・ジャッファ
- 録音……ダグラス・シアラー
- フィルム編集……アルバート・アクスト