「素敵な二人」(A Couple of Swells)とは、映画「イースター・パレード」の中で、アステアとガーランドが踊るコミックダンスである。
非常に有名なナンバーであり、MGMの歴史の中でもトップクラスの完成度と言われる名作である。
アステアとガーランドが、歌い、踊るナンバーで、歌詞だけ聞くと、一瞬「上流階級」の歌かと思うのだが、実はルンペンの歌である。
ルンペンが、自らの生活を「ハイソっぽく」歌っているのだ。(例えば、「友人夫婦に招かれた」という歌詞があるが、どんな友人のどんな家なのやら?)
ルンペンの歌なので、二人はもちろんルンペンの扮装である。
これが、大笑い。
ガーランドも、アステアも、あっちこっち破れたボロボロの服装、歯欠けメイク、ドタ靴。(このメイクをOKしたガーランドの心意気は素晴らしい。この人は真のプロだ……)
しかも、二人ともトップハットにテールコートという、「元正装」なのがおかしい。「元は上流階級の人が没落して、今はルンペン」という設定なのかもしれない。
ところで、この曲の、アステアとガーランドの関係は、一体何に当たるのだろうか。
タイトルに、「couple」とあるので、男女カップルだと思うのが普通らしいのだが(映画コラムなどでは、「ルンペンの夫婦」と書いている人もいる)、私はずっと前から、「ガーランドは男に扮装している」ものと思っていた。
だって、男物の洋服だもの。だから、あれは、男のルンペン二人(ダチなのだろう)のダンスだ、と信じて疑わなかった。
しかも、曲の最後に、ステージからはけるときに、二人は礼節も正しく
「どうぞお先に」
「いえ、あなたこそお先に」
みたいな動作を繰り返すのだが、男と女ならば、このような仕種はおかしい。
アステアがガーランドに、「さあ、どうぞ……」という、レディ・ファーストであってしかるべきである。swell(=一流)の人なら、そうするはず!
coupleという語は、特に「男女」でない二人の人間に使うこともあると、私の英和辞典には書いてある。だから、この二人は、男と男なのではないか?
もう一つ、私が根拠とするものは、「ガーランドが無精ひげメイクをしている記憶がある」からである。
スクリーンで見たときに、はっきり、薄黒く無精ひげメイクをしていたと思う。(アステアもしていたはず)
今、手元のビデオを見ると、「何らか塗っている」のは確か。ただし、薄汚れメイクなのか、無精ひげメイクなのか、はっきりとは断言しかねる。
でも、「友人夫妻に招かれる」のは、やはり招かれる側も男女カップルであることを指しているのだろうか?
やはり謎だ!
何か、決定的な資料が無いか、探してみよう。
●追記●
「二人の名士」という邦題もあったはず。この場合は、「二人とも男」とみなしている?
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