●1949.4.11 MGM
●日本未公開(なぜ来なかったんだろう? 面白いのに)
ブロードウエイのバークレー夫妻 キャスト
(役名……俳優名)
- ジョシュ・バークレー……フレッド・アステア
- ダイナ・バークレー……ジンジャー・ロジャース
- エズラ・ミラー……オスカー・レヴァント
- ジャック・バルドー……ジャック・フランソワ
- シャーリーン・メイ……ゲイル・ロビンス
- バート……クリントン・サンドバーグ
- メアリー……マーガレット・バート
- 劇場のチケット係……ジャック・ライス
- 劇場ロビーの客……ベティ・ブライズ、ベス・フラワーズ
ストーリー
ジョシュとダイナのバークレー夫妻は、ブロードウエイで名高いダンスコンビ。今日もショーの終りに、パーティーに向かう途中、演出のことで、恒例の夫婦喧嘩になる。
パーティー会場で、ダイナは新進の劇作家バルドーに会い、「悲劇女優の素質がある」と言われる。演技を正等に評価されたことが無いダイナは喜ぶ。
しかし、バルドーと話しているのをジョシュが誤解。再び夫婦喧嘩に。(すぐ仲直りするんだけど)
バルドーは、ダイナを、自分の新しい芝居のヒロインにしたいと考え、数日後に再会したときに、ダイナに出演を依頼する。
ダイナは、心を引かれながら「夫との仲がだめになってしまう」と引き受けない。しかし、また夫婦喧嘩が始まり、ダイナは家を飛び出し、バルドーの依頼を承諾する。
ジョシュは、友人には「どうせダイナの芝居などダメさ」と言いながら、心配で、こっそり稽古を見に行く。そこには、バルドーの演出にとまどい、混乱しているダイナがいた。
ジョシュは、バルドーの声真似で、ダイナに毎日のように電話をかけ、芝居のアドバイスをし、舞台を大成功に導く。
初日の夜に、ジョシュはバルドーの声真似で、「まだご主人を愛してるのか」と電話をかけ、ダイナの真意を確かめようとする。ダイナは、その電話で、初めてジョシュの声だと知り、毎日のアドバイスは、ジョシュがくれていたと悟る。
ダイナは、ジョシュの家に帰り、再びミュージカルの舞台にも帰って来る。
ミュージカル・ナンバー
(★はアステアのナンバー)
- Swing Trot★
- Sabre Dance
- You'd Be Hard to Replace★
- Bouncin the Blues★
- My One and Only Highland Fling★
- A Weekend In the Country★
- Shoes with Wings On★
- Piano Concerto In B-flat Minor
- They Can't Take That Away from Me★
- Manhattan Downbeat★
- Angel
- This heart of Mine
その他情報
- アステア&ロジャース復活作。そして、これが本当に最後のアステア&ロジャース映画となった。チャールズ・ウォルターズは、アステア&ロジャース映画を監督できる喜びに涙したそうだ
- 本作のヒロインは、当初ジュディ・ガーランドの予定だったが、ジュディの精神不安定により、ジンジャーに変更になった。(ジュディ・ガーランドの項参照)
- 当初はジュディの役だったのだから、ダイナがソロで歌うナンバーが、必ずや用意されていたはずである。そのナンバーは、撮ったのだろうか? 撮ったのだとすれば、「ザッツ4」で公開し、人類の共有財産としていただきたい(ダイナが圧倒的な歌唱力で歌うシーンは、どこに入るはずだったのだろうか。もちろん、脚本は相当書き直されたのだとは思うが……)
- 当初、振り付けはハーミズ・パンが担当していたが、ジュディが「別の振付師を」と言ったために、最終的にパンは外された
- オープニング曲「Swing Trot」は、アステアが、自分の経営するダンス・スタジオで創作したステップの名前をタイトルにしている。スタジオの宣伝目的で、アステアがこの映画に入れるように頼んだらしい
- ジョシュが、言葉にならない愛をダイナに伝えようとする「They Can't Take That Away from Me」は感動的である。なつかしのアステア&ロジャースナンバーであろうがなかろうが(「踊らん哉」で使用されている)、感動的である。しかし、ジョージ・ガーシュイン作曲のこの歌を入れることに、ハリー・ウォーレンはいい顔をしなかったという
- ジョシュが初めてバルドーのものまねを披露するシーンで、お店のBGMとして流れている曲は「This Heart of Mine」。「ジーグフェルド・フォーリーズ」で、アステアとルシル・ブレマーが踊るナンバーである
- 「Shoes with Wings On」で、私が昔から気になっていることなのだが、アステアに「勝手に踊る変な靴」を預けていく男って、最終的に裸足で去って行っていますよね。「靴を試着する→靴を脱いでアステアに渡す→そのまま、自分の靴を履かずに立ち去る」になってません? これは、明らかにダンスの導入部として、「靴を渡して直ちに去る」方が、流れが良いという理由でそうなっているのだと思う。もそもそ靴を履き替えていたら興ざめであろう。しかし、気付いてしまうと、「裸足のまま笑顔で立ち去る紳士」というおかしなものを見てしまうことになる。(もちろん、カメラは決して紳士の足もとを映さないが)私はこれを、連続性のミスだと言うつもりは無い。ただ、昔から誰かに言いたくてしょうがなかったのである
- オスカー・レヴァントが、2曲もピアノ演奏を披露してくれている
- アステアは、自伝の中で「My One and Only Highland Flingのナンバーが自分のお気に入りだ」と語っている
- 1951年に、ラジオドラマ版の「ブロードウエイのバークレー夫妻」が放送され、ダイナ役をジンジャーが演じた。ジョシュの役はジョージ・マーフィーだった。ラジオなのに、ちゃんとタップのできるマーフィーを連れてきているところが面白い
- アステアとジンジャーは、10年ぶりのダンスだというのに、まるでそのブランクを感じさせない。こういうのは、まるで昨日別れたばかりのように、すんなりなじむものなのだろうか。(ジンジャー、ミュージカルやってなかったんだから、えらいものだ)良い悪いを超えた、この安定感は何事だろうか。「アステア&ロジャース」という、二人とは別の人格があったりするのだろうか。そもそも、「アステア&ロジャース」の、あのはまりっぷりは何なのだろう。この問いに答えうる分析や評論を、私は見たことがない。「それらしきもの」さえ、見たことがない。実質のデビュー作でアステアがジンジャーに出あったことは、奇跡であったのかもしれない
スタッフ
- 製作……アーサー・フリード
- 監督……チャールズ・ウォルターズ
- 脚本……ベティ・コムデン、アドルフ・グリーン、シドニィ・シェルダン
- 撮影……ハリー・ストラドリング
- 美術……セドリック・ギボンズ
- 音楽……レニー・ヘイトン
- 歌曲……アイラ・ガーシュイン、ハリー・ウォーレン
- 振り付け……ロバート・アルトン、ハーミズ・パン
- 衣裳……アイリーン
- ヘア・スタイリスト……シドニー・ギラロフ
- 録音……ダグラス・シアラー
- フィルム編集……アルバート・アクスト