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刑事コロンボにまつわる噂話

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刑事コロンボに、アステア&ロジゃースが揃って出演するかもしれない、という噂話があったことをご存知だろうか。

噂のあった作品とは1975年に放送された、刑事コロンボの32作目のエピソード、「忘れられたスター」(Forgotten Lady)である。
1975年といえば、前年の1974年に「ザッツ・エンタテインメント」が公開されて人気を博したばかりであり、「忘れられたスター」は、その人気にあやかって作られた、「往年のミュージカルスター」を描く作品であった。

刑事コロンボシリーズは、最初に犯人を明らかにするタイプのドラマなので、遠慮なく書いてしまうが、犯人の名前はグレース・ウィラー。演じたのは、ジャネット・リーである。(ジャネット・リーは、さすがにおばあさんになっているが、おっそろしくきれいでチャーミングなおばあさんである)グレースは、舞台への出資を拒む夫を射殺するのである。

ドラマは、往年のミュージカルスター、グレース・ウィラーが、昔のパートナーのネッド・ダイヤモンド(演ずるはジョン・ペイン)とともに、「ソング・アンド・ダンス」の試写会場から出てくる、という場面から始まる。(作中映画の「ソング・アンド・ダンス」は、昔のミュージカルの名場面集的映画であり、そのまんま「ザッツ・エンタテインメント」である)

この、グレース&ダイヤモンドを、アステアとジャンジャーがやるのではないかという、まことしやかな噂が流れたらしいのだが、どの程度の信憑性がある噂だったのかは不明である。それは、根も葉もない噂だったのか? 実際に企画会議で名前が挙がったのか? はたまた、オファーまでしたのに交渉成立しなかったのか?
私の希望としては、「製作側は強力なオファーをかけたが、最終的にジンジャーのギャラNG」とかだったらいいな、と思っている。(何がいいのじゃ!)

私は、ミステリ・ファンでもあるので、刑事コロンボシリーズはもちろん好きである。「忘れられたスター」も、何回も見ている。
刑事コロンボの作品には、やたら何回もTVでオン・エアされる作品と、20年たってもTVでは二度目が見られないような作品があるのだが、「忘れられたスター」は、大変に放送回数が多く、私は4~5回ほども見ており、刑事コロンボの中でも好きな作品である。

「忘れられたスター」が好きなアステア・ファンとしては、アステア&ロジャース版でも、ぜひ見てみたかったと思う。(ジャネット・リーも非常に良いので、ジャネットじゃなければよかったのに、とは思いたくない)特に、最後の「解決」の場面は熱烈に見たいと思う。なぜなら、ネッド・ダイヤモンドがかっこいいのである。フレッドがこれを演じてくれたら、どんなに良かったか!

ここをアステア&ロジャースで見たかった!

犯人グレースが、バルコニーから庭木に飛び移り、そこから庭に飛び降りるシーン

これを、ジンジャーで見たい! これは、グレースが、犯行を済ませて、執事に見つからないように自室に帰るために窓から抜け出すために行うのだが、
「普通の老女には難しい。鍛えられたダンサーの肉体があって初めて成り立つ犯行」
なのである
ついでに、「バルコニー→庭木→着地」は、ジンジャーが関わらなかった唯一のRKO製アステア映画である、「踊る騎士」でアステアが飛ぶ「レナードの跳躍」と同じである。(レナードの跳躍は犯罪ではなく、「騎士道の極み」だけど)

コロンボが、グレースとダイヤモンドを見て舞い上がるシーン

コロンボは、どうやら映画通らしく、往年のダンスコンビを見て感激する。アステア&ロジャースを見て感激しているピーター・フォークはぜひ見たかった。

ダイヤモンドが、「昔君を好きだった」と、グレースに告白するシーン

ダイヤモンドが告白すると、グレースは
「今はどうなの?」
と聞く。
ダイヤモンドは、
「今も変わらないよ」
と言うのだ。
何歳になっても、ジンジャーを恋するアステアは素敵なはず!

パーティーに出たグレースとダイヤモンドが、二人でダンスするシーン

これは、見たいでしょう。当然見たいでしょう。

「解決」のシーン

このシーンについては、下記の「警告」の下に書きます。

※※警告※※
下に、私が一番見たかったシーンとして、「解決」のシーンを紹介しますが、「忘れられたスター」の解決は、刑事コロンボのシリーズの中でも珍しいタイプのサプライズを含んでいます。
よって、「忘れられたスター」を未見で、これから見ようとする方には、下記を読むことはおすすめいたしません。ぜひとも、作品を見てから読まれてください。
何を知らされても一向かまわない、と言う方だけお進みくださいね。

※ここより、刑事コロンボ「忘れられたスター」の核心に触れます。

どうしても見たかった「解決」のシーン

刑事コロンボは、普通は「謎解き」を、犯人その人の前で行う。しかし、「忘れられたスター」では、コロンボは謎解きをダイヤモンドの前で行うのである。
なぜなら、グレースは、自分の犯行を忘れてしまっているからだ。

コロンボは、グレースの夫(医者。グレースの主治医だった)が残した、彼女のカルテを見たのだ。カルテによれば、彼女は記憶障害を起こす動脈瘤で、持って2ヶ月程度の余命だという。(夫は、彼女の病気を知っていたために、舞台の準備などさせたくなく、出資を拒んでいたのに、それが原因で殺されてしまった)
グレースの言動から、コロンボは彼女が、すでに自分の犯行すら忘れていることを知ったのだ。ダイヤモンドは彼女の犯行にも、病気の事実にも驚く。

……と、いうやりとりをしているところに、グレースが現れ、
「まだ私を疑っているの」
とコロンボに詰め寄る。(グレース的には自分は潔白だから、本気で心外なわけ)

グレースに、コロンボが答えようとするのを遮り、ダイヤモンドは
「殺したのは僕だ。君のためにやった」
と言う。「自白」したダイヤモンドを、コロンボは連行せざるをえなくなる。
連れて行かれるダイヤモンドに、グレースは
「あなたを待っている」
と言う。
コロンボは、
「穴だらけの供述で、身代わりになろうとしても無駄」
と言うが、ダイヤモンドは、
「いや、耐えてみせる。2ヶ月間は」
とこたえる。すでに自分の凶行も忘れているグレースを、潔白と思わせたまま死なせてやりたいというダイヤモンドの思いを理解し、コロンボは「それがいい」と言い、二人はグレースの屋敷から去っていく。

このシーンを、アステアで見たかった。どんなに良かっただろうか。
アステアがおじいちゃんになり、ジンジャーがおばあちゃんになっても、アステアはジンジャーを守ったに違いないのだ。
スクリーンで、アステアがジンジャーを守らなかったことは、一度も無いのだから。

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