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電力館で聞こえたのは

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私は、「パリの恋人」の初見はスクリーンだった。渋谷の電力館で、無料上映にかかったのを見に行ったのである。

「パリの恋人」は、世間的には「ヘプバーン映画」である。あれを、アステア映画だと認識しているのは、一部のアステアファン、ミュージカルファンだけで、世の大勢は「オードリーの出てた映画」として見ているのである。(まあ、ホントは誰の映画ってことでも無いんですけどね)

私は、いかにアステアにのぼせていても、ちゃんとその辺のところは分かっているつもりでおったので、満員の会場(座れなかったのだ。さすがだ)のお客さんは、ほとんどオードリーを見に来たのだろうなあと思っていた。私の記憶によれば、たしか夏休み中かなにかで、あのような古いミュージカルなのに、子供さん連れがちらほら見られた。

しかし、会場に入ってしばらくしたら、私は、
「ああ、電力館はアステア映画をかけるつもりなのだ」
と思った。
待ち時間のBGMが、アステア・メドレーだったのだ。

大昔のことなので、よくは覚えていないのだが、インストのアステア・メドレーだった。あんな音は、どこから持ってくるのだろう。
私は、じーっとBGMを聞いていたが、確か、分からない曲は無かったと思う。
覚えているのは、メドレーの最後の曲が、「トップ・ハット」ではなかったことである。これは、「私なら、トップ・ハットでしめるけどね!」と思ったから、覚えているのだ。

今にして思えば、あの会場で、「アステア・メドレーだ!」と分かったお客は何人いたのだろうか。場内に、リアルタイムでアステア映画を見られた世代のお姿は、ほとんど見かけなかったように思う。

私は、初見の「パリの恋人」を、まあまあいい映画だと思った。オードリーと、アステアが、カップルとして無理が無いところが良いと思った。(オードリーという女優には、なぜかおじさんが似合いますからね)また、アステアのキャメラマン役がとてもスマートで、かっこよくはまっているのが良かった。
驚いたのは、ケイ・トンプスンの魅力であった。
しかし、映画としての総合得点は、「パリの恋人」は、「イースター・パレード」には遠く及ばないな、とも思った。「イースター・パレード」のエンディングは、劇場が震えるのを見たと思ったものだが、「パリの恋人」で、電力館は震えはしなかったから。

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