1959年に出版されたフレッド・アステアの自伝。タイトルを付けたのはノエル・カワード。
幼いころにダンスを始めたときのことから、1958年にテレビで放送された今宵アステアとともにまでの彼のキャリアと人生がつづられている。
ゴーストの筆でもなく、聞き書きでもなく、本当にアステア自身の書いた自伝らしい(ウソじゃないと思う)。
私には、最後のページの「ダンスを自分の自己表現にの手段にしたことなどない」という一文が衝撃的であった。
本書には、映画化の話が持ち掛けられたことがあったが、アステア本人がOKを出さなかった。「フレッド・アステア伝」の作成は絶対にお断りであるという遺言も残しているので、もう絶対的に嫌だったようだ。(ファンとして個人的には、フレッドが嫌なら別にそれでいいよ、残念ではない、第一誰が演じるの?と思う)
日本では、2006年に初めて翻訳された。アステアファンからすると、非常に、非常に遅い訳出であったと言うほかない。
映画しか見ていないファンには、舞台時代の記述が興味深く、面白い。かなり詳細な記録になっていて(少年時代のことなのによく覚えているものだ)、資料性も高いと思われる。
本書を、ゴシップ的なことを楽しみにして読もうとすると、多分肩透かしになるかと思う。スキャンダル的噂の真相とか、個人名を挙げてのディスリとかは全く無い。ハリウッドのナイスガイは、文章の上でも変わらずナイスガイである。
これからの入手を考えている人のために、出版状況を言うと、どうやら重版はかかっていないように見える。しかし、新刊で置いている本屋もまだある。
古書では、3,000円以上することが多い。場合によっては、7,000円くらいのこともある。もし、数100円~1,000くらいで見つけたら、即買いした方が良いかもしれない。