ボブ・トーマス著の、アステアの伝記。日本語版は武市好古訳。(「評伝」と言うには、「評」の記述が弱いと思う)
アステアの舞台・映画の仕事を主に、彼自身の証言や、家族の情報など、とても詳しく書かれている。本書は、アステアの人生を描いた書籍としては、日本で最初に出版されたものだと思う。(フレッドの自伝の翻訳はもっと後年である)少しでも濃いアステア情報を求めていたアステアファンの知識の渇きを、最初に潤した本と言っても過言ではない。
章タイトルは、
- アステア、1983年
- ボードビルの時代
- ブロードウェイそしてロンドン
- RKOとジンジャー
- 彼、ひとりで
- 引退とカムバック
- テレビジョン
- 新しいキャリア
- ロビン
私には、舞台時代の情報が非常に興味深かった。
また、アステア自身の談話が多いのもありがたい。著者はアステアとの長い交流を経て本書を書いているので、自分の持っているリアルなアステア談を本書に記述している。伝記作家の人なので、いつか書くつもりで会話を記録していたのだろう。
本書はアステア存命中の出版物のため、彼の死までは描かれていない。最後の章は、アステアのAFI生涯功労賞受賞時のスピーチで締めくくられている。
アステアへの深いリスペクトを感じる伝記である。