人は顔じゃない、という言い方をよくするが、アステアはその言葉の証明のような人である。
私は、中学生のときにアステアに出会ったが、二十歳をすぎるまで、「アステアは美男子でもなんでもなく、ヘチマによく似たおじさんだ」という事実に気づかなかった。
ダンスがステキすぎて、ヘチマに気付けなかったのである。
芸や、個性の力で、世界一素敵な男性になることは、可能なのだ。
その証拠に、スクリーンの中で、美女達がアステアに惚れるのに、何の違和感も無い。(美女の中にはオードリーさえ含まれている)むしろ、「無理も無い!」と思えるケースがほとんどなのである。
考えたら、ヘチマ顔で、軽コメディ役者で、小男で、ついでにヅラ(アステアは、32~33歳頃から薄くなりはじめた)だったのに、エレガンスの代名詞なれた個性には脅威を覚える。
だからこそ、アステア人気は風化していかないのだろう。(アステアファンは、「最近アステアが好きになった」人に、よく出会いますからね!)
上には「ヘチマ顔」とか書いてしまったが、アステアは、「ハンサム Best5」に選ばれたことがある人である。NYの美容院チェーンで、ハンサム男の投票を行ったところ、アステアは、しっかり「5傑」に選ばれたのだ。私が「本物の美男子だ」と思っている、ゲーリー・クーパーなどと一緒に選出されているのである。
このように、とてつもない武器を持った男というものは、その力でハンサムにだってなれるのである。中学生の私を幻惑したアステアの魅力は、NYの大人の女の人も幻惑していたのである。(考えたら、女子中学生を幻惑することの方が、大人を幻惑するより難しいともいえる)