トップ・ハット Top Hat,White Tie and Tails

作詞・作曲ともアーヴィング・バーリン。映画「トップ・ハット」でアステアが歌い、踊った曲。

「トップ・ハット」のメロディは、それだけでアステアを思い起こさせる。アステアそのものともいえる曲である。
エド・サリバン・ショーでは、1955年に、「足ながおじさん」の宣伝のために出演したアステアにさえ、この曲を使った。

映画「トップ・ハット」では、ダンサーのアステアが、ショーでこのナンバーを披露するという設定になっている。
アステアが、男性群舞を従えて踊る、粋で創意にあふれるダンスは、ミュージカル・ファンならば見ておいた方がいい。

まず、ダンサーズをバックに、アステアが歌う。(アステアも、ダンサーズも、みんなホワイトタイにトップハット)
そして、ダンスに入る。
アステアのタップに、ダンサーズが付いてくるのだが、女っ気の無いステージに、アステアが男の色気を見せてくれるのが嬉しい。
センターのアステアの動きの美しさは群を抜いている。素朴に、何が違うんだろうなあと思う。(100回見てもそう思うのである)

やがて、ダンサーズがはけて、アステア一人の舞台となる。
アステアは、ステッキも使い、実質三本足で踊る。
三本足で、マシンガン・タップを繰り出すアステア。女性パートナーがいないと、アステアは本当に遠慮も何も忘れてぶっ飛ばしてくれる。(私の知人に、このダンスのビデオを見せたら、「これ、早回しでしょう?」と言ったやつがいた。そのくらい、スゴイ)

マシンガン・タップから、ステージの照明が変わり、アステアのシルエットが浮かび上がるようになる。
この部分で、アステアのダンスは、タップからパントマイムに変わる。このパントマイムは、アステアのダンスの中では珍しいことに、アドリブである。

パントマイムを見せた後、はけていたダンサーズのシルエットが出てくるところからが、このダンスのメインである。
横一列のダンサーズの影が、「ズンズンズン」と出てきて(そんな感じなの)、アステアはそれと対面する。(つまり、アステアは、お客に背を向けている。ちょっと珍しい)アステアは、自分のタップ音を、銃声に見立てて、ダンサーズを一人一人打ち倒していく。文字通り、「マシンガン」のように打ち倒す部分もある。
最後に、一人手ごわいヤツが残り、そいつを弓でしとめてフィナーレ。

カーテン・コールで出て来たアステアが、招待席に向けて「ステッキ銃」を撃つところが、死ぬほどかっこいい。

アステアが、ステッキを銃に、タップ音を銃声に見立てて、コーラスを打ち倒すという趣向は、映画「トップ・ハット」で初めて創ったものではない。ルーツは、1930年、まだアステアが舞台で活動していた時代にさかのぼる。ジーグフェルド劇場にかけられた、アステア姉弟の舞台スマイルズの、「Say Young Man of Manhattan」のナンバーで、同様の趣向のダンスを初披露していた。
アステアは、この趣向を、眠れない夜に思いついたのだそうな。

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