フレッド・アステアとは

謎のアステア特番

更新日:

アステアが亡くなったとき、つまり、1987年の6月に、私はある特番を見た記憶がある。

その特番は、アステアが亡くなってすぐ、少なくとも「亡くなった週のうち」くらいの「すぐ」に放送され、要するに、「追悼番組」であった。

内容は、アステアがAFI功労賞を取ったときに開かれたパーティーの模様を編集したものと、様々な映画からのアステアのダンスナンバーの紹介で構成されていたと思う。

パーティーでは、色んな映画人が、アステアをたたえるスピーチを行った。残念ながら、ほぼ覚えていないが、はっきり覚えているのは、オードリーが、アステアと踊ることを、「世界中の女の夢」と表現したことである。そして、期待したのに、ジンジャーは欠席で、メッセージだけが読み上げられた。

もちろん、アステア本人も登場した。正装のアステアは、しわを刻んだおじいちゃんになっても、エレガンスそのもののような姿であった。
ステージには、往年のアステアのダンスシーンが、連続写真になって掲げられていた。その写真の前で、アステアは、
「いつも作品を見るとがっかりするんだ。あんなに一生懸命踊ったのに、まるで止まってるようなダンスなんだから」
と、完ぺき主義にもほどがあるようなことを言うのだった。そのうち、ステージ上の自分の写真を指さし、
「そう! こんな感じで、止まってるようなダンスなんだ。おい(写真に向かって)止まってるな、動け!」
と言い出し、最後はきっちり「笑い」でスピーチを締めていた。(ハリウッドスターだねえ!)

私は、この特番を、実家のテレビで見た。そして、長い間、なぜか放送したのは「日テレだろう」と思っていた。(放送時間は、平日の夜か、土日の夕方だったと思うが、あまり自信が持てない)ところが、どうやら日テレでは、このような特番を放送してはいないらしい。

私は、アステアが亡くなってからずいぶんたったあるとき、アステア・ファンの方と話をしていて、その方に「そんな特番知らないなあ」と言われたのだ。それから、何年もの間、アステアトークできる人の誰に聞いても、「そんな番組やってない。放送すれば、自分が見逃すわけが無い」と、私は言われ続けた。
あまりに、「やってない!」と言われたために、私は一時は自分の記憶を疑いだした。だって、よく考えれば、「そんな番組を、なぜ自分はビデオに録らなかったのか」という、大きな疑問も浮かんできたからだ。

しかし、必死で思い返すうちに、私は、特番を見ていた部屋に父もいて、「ピアノ・ダンス」を踊るアステアを見た父が、
「ふーん、身が軽いんだろうねえ」
と言ったことを思い出した。
私は、アステアがピアノ・ダンスを踊る「レッツ・ダンス」のビデオを持っているが、これを実家で見たことは無いのだ。だから、あの特番は、絶対に、絶対に放送されたのだ!

という、私の「謎の特番事件」というのがあるのだが、昨年、ある映画関係の掲示板かなにかで、私は、この「特番」のことを話題にしている方がおられるのを発見した。その方も、ほかの人に「そのような特番は、残念ながら見て無い……」と言われていたが、その方は、千葉県在住のかたなのである。
う、うちの実家も、千葉県なんですけど。つまり、「千葉テレビで放送した」可能性が、非常に色濃くなってきた。

しかし、千葉テレビふぜいが(千葉県民は、千葉テレビに対して厳しい)、アステアの特番を流すなどという、粋なはからいをするものだろうか、という疑問は大いに感じる。そして、なぜ私はビデオを録らなかったのか、という疑問も大きい。

しかしまあ、とりあえず、お礼を申し上げておくべきでありましょう。
「千葉テレビさん、もしも、あのときアステア特番を放送してくれたのが貴局なのであれば、感謝申し上げます。ビデオ録り損ねましたが、わが胸のなかで、あの番組は不滅であります」

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※この記事の内容については、ゲスト様たちから頂戴したコメントのほうがいろいろと正確で詳しいので、旧ブログ時代に頂戴したコメントすべてを、以下に表示します。

これはアステアが、American Film Institute Life Achivement Awardを受賞した時のパーティですね。わたしは当時関西に住んでいましたが、深夜にグレゴリー・ペックやジーン・ケリーのものをTVで見たことがあります。アステアの受賞セレモニーは、20年ほど前にアメリカでVHSになっているものを入手しました(後にプログラムも入手しました)。他にもヒッチコックやケリーのものも所有しています。アメリカはこういうトリビュートものがうまいですよね。楽しくて、今までに何度も見ていますが、まったく飽きません。
Posted by Harrison at 2009年01月23日 01:14

AFI功労賞のセレモニーは、国内版LDでもありました。
和田誠によるジャケットで、アステアやジーン・ケリーなど14年分が発売されたとのことです。(私は現物とも未見ですが)
(和田誠『時間旅行』メディアファクトリー 2001.1.14 p148-149)
ぜひDVD化してほしいです。
Posted by 銀魚 at 2009年01月24日 19:48

Harrisonさん
情報ありがとうございます。どうやら、関西では放送しなかったのですね。やはり、千葉テレビか?
ソフト持っておられるとはうらやましい。20年前の記憶なので、私も大して自信が無いのですが、ステージ上の写真は、連続写真というか、あるダンスから1コマ1コマ選び出して並べたもので、それも、横一直線じゃなくて、跳躍するようにポンポンポンと並べてあったと思うんですよね……。合ってますか?

銀魚さん
情報ありがとうございます。国内のLDにあるとは、私としては結構ビックリです。そして、もちろんDVD化して欲しいですねえ。
自分がなぜビデオに録らなかったかと考えたら、「映画じゃないから」だったのかもしれません。私も、当時はそれなりに子供だったのでしょう。
Posted by 管理人 at 2009年01月25日 21:40

友人からもらったVHSを今ではDVDにして所有しています。

管理人様が記憶している部分の他で私が印象的なのは、シド・チャリシーの変わらぬ美しさ、ジーン・ケリーのスピーチの“彼らしさ”、そして最後のスピーチをするアステアを見守るロビンの不安そうな表情です。

私の所有しているのはテレビ放映を録画したものなので、編集が加えられている感じはありますが、字幕があるので助かります。
番組タイトルは『ダンシングマイウェイ! フレッド・アステアのすべて』です。放映開始前にスーパーで追悼の辞が映ります。

今ではCMをカットして編集してしまったので断定はできませんが、私はテレビ東京による放映であったと今まで何の疑いもなくおりました。

ご希望でしたら差し上げますが?
Posted by ontheritz at 2009年01月26日 04:48

で、予想していた通り編集が加えられていたことが判明しました。

http://jp.youtube.com/watch?v=7vBLRO9pZ4c

この祝辞は初めて目にしました。
収録されていない悔しさもさることながら、『踊るニュウ・ヨーク』ではお世辞にも上手いお芝居をしていたとは云えないパウエルが非常にダイナミック且つドラマティックに話す姿には感動を覚えます!
Posted by ontheritz at 2009年02月01日 12:11

ontheritzさん
レスが大変遅くなりまして、失礼しました。
シドとか、ジーンの姿は覚えてないですが、ロビンはコメントを拝見した途端に思い出しました。首の細い人だなーと思ったことも思い出しました!
とてもありがたいご好意は、お気持ちだけ頂戴することにいたします。その気になったら、自力で入手できるように思いますので。

テレ東で放送というのは、有り得るように思います。(千葉テレビにお礼書いちゃったけど)しかし、私の東京在住の知人達が「知らない」というのが引っかかります。
Posted by 管理人 at 2009年02月08日 22:40

初めまして。
私も小学校5年生のときからアステア・ファンなり、もう60才になってしまいました。
こんなオタッキーなスレがあるなんて、全く知りませんでした。大変楽しく読ませていただいております。

実は私はその「謎の特番」をビデオに収録していて、何十と見ていました。チャールトン・ヘンストンの司会で始まったような覚えがありますが?、アステアの子供の頃の写真や姉のアデールとの写真などがコマ送りで移り変わっていく、とても粋な始まり方をする貴重なビデオでした。

放映したテレビ局、正解は千葉テレビです。
大の競馬ファンでもある私は大手の民放が放映しない時間帯でも実況放映してくれるのがありがたくて、いつも千葉テレビを見ていました。
それで、アステアの特番をがっちり録画できる幸運に恵まれました。
老けたとはいえ品の良いオードリー・ヘップバーンまで祝辞を述べに出てきまして「ピンク・ソックス!」などと唸り、アステアのセンスのいいお洒落を誉めていました。アステアと踊るのはすべての女の子の憧れ、そんな幸運に自分は恵まれたのです…などと語っていました。

ところが1995年頃でしたか、中野で知り合ったキャバクラ嬢が、とてもダンスに熱心で美しい娘だったもので、ぜひ見せてあげたくてビデオを貸してしまったのが運の尽きで、戻ってくることなく辞めておりました。
残念でなりません。
自分の馬鹿さ加減が情けないです。
女なんて、自分のことしか頭にないんですね。

よたよたしながら老人となったアステアが舞台で踊ろうとして諦めるシーンなど、涙が出てしまうような貴重なシーンまでありました。
素晴らしい番組です。

DVD化されることを願ってやみません。
これから、ゆっくりと毎日すこしづつこちらの「夜も昼もアステア」スレ、読ませてもらいます。
とても楽しみです。

誤字脱字が目立ったので直して再送しました。
前のは削除していただけたらと思います。
Posted by minetoshi at 2011年10月09日 10:00
minetoshiさん

ブログ内のコメント欄は、すべて閉めたものと思っており、いただいたコメントを見逃しておりました。大変失礼いたしました。

千葉テレビでしたか!
謎を解決してくださってありがとうございました。そんな粋なまねを、あの局がするとは。

当ブログは、凍結&移転を前提としておりまして、この記事のコメント欄も、数日中に閉めさせていただきます。
長くコメントを見逃してしまい、申し訳ありませんでした。
Posted by 管理人 at 2012年03月06日 15:50
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